紅茶王子、最近増えている“コンビニゴディバ”が気になって仕方ない

 今年後半になって、アスキーのグルメ記事で「ゴディバ」というワードをちょくちょく目にするようになった。「ベルギーが世界にほこる、言わずと知れたチョコレートブランドがなぜ?」と思ったら、どうやらローソンがゴディバとのコラボレーションスイーツを出しているようで、6月のロールケーキに始まり、プリン、タルト、ガトーショコラと続き、12月中旬の時点で第5弾まで発売されているらしい。我らがグルメ担当のナベコさんも10月末に発売された第4弾のロールケーキなどをお召し上がりの様子。このコンビニゴディバが超気になって仕方がないのだ。

 僕の専門分野はオーディオ・ビジュアルだが、以前家電担当の盛田さんより「紅茶王子」の称号を頂いた。というのも、編集部に自前のティーポットとティーカップ、サンドイッチ用のプレートにポットを保温するティーコージー、そして紅茶を淹れるのに重要な熱々のお湯を沸かす、自前のティファール・ケトルを持ち込んでいるからだ。カタカタというキーボードの音が絶えないオフィスの中で、リーフから淹れたお茶の香りを愉しんでいたところ、袖机に入っていたティファールを家電ハンターに補足されたという次第である。

 そんなワタクシ天野透、お菓子の街神戸出身で、西洋菓子を中心とした甘いものが大好き。自宅や編集部でお茶と一緒にたしなむのはもちろん、地元の神戸へ帰るたびにあちこちのパティスリーを食べ歩いている。“スイーツめぐり”と称して朝から夜まで神戸市内のパティスリーを渡り歩き、ケーキやフィナンシェやムースなど、食事そっちのけで様々なお菓子を1日に4品も5品も食べることもしばしば。

 特にチョコレートには目がなく、紅茶やコーヒー、ウィスキーなどと一緒にボンボン(高級チョコでよく出てくるタイプの、1粒単位のチョコレート)をいただくのは至福のひとときだ。ボンボンショコラが3粒にポットの紅茶があれば2時間くらいは余裕で愉しめるし、実際にそんな休日を過ごしたことも1度や2度ではきかない。もちろんゴディバも大好きで、黄金色の箱に並ぶボンボンやクッキーサンドなどのお菓子を見るたび、食べるたびに、その丁寧な仕事ぶりに癒やされる。

 僕のゴディバの印象は「丁寧なチョコレート」。まろやかなミルクやバターと豊かなカカオの香りに、フルーツやスパイスなどを織り交ぜたお菓子は、何度でもスイーツの愉しさを饒舌に語ってくれる。特にブリュッセルの「グランプリュス」にある本店で食べた「イッ↑チゴ↓チョッコ」(現地風発音)は今でも忘れられない。フレッシュなイチゴをひとつひとつ手作業でコーティングしていたが「新鮮なフルーツの酸味と上質なチョコレートのコクがこんなにも味覚を驚かせるものなのか!」と感じさせる、得難いチョコレート体験だった。

 少々話が脱線したが、ゴディバというブランドにはそんなワンダーが詰まっていると僕は思っている。それが全国で24時間営業しているコンビニで売っているときた。果たしてコンビニゴディバはどのくらい“ゴディバ”しているのだろうか? ゴディバしていたら嬉しいな…… 期待と不安は否応無しにふくれ上がる。悶々としていても始まらないから、自分で買って食べてみた。オーディオレビューばりの、スイーツながら“辛口”なレビューをお届けしたい。

ローソンゴディバは街のケーキ屋より高価、なのに包装はUchi Cafeの延長線上

 今回試したのはローソン「Uchi Cafe SWEETS GODIVA 濃厚ショコラケーキ(ラズベリーガナッシュ入り)」と「Uchi Cafe SWEETS GODIVA ショコラクッキーサンド(オレンジピール入り)」。140円のエクレアや200円のプリンがならぶUchi Cafeシリーズの中では頭ひとつ抜けて高価で、価格はいずれも400円。これにはちょっと面食らってしまった。

 と言うのも、街のパティスリーのケーキは1ピース250円から350円くらいが相場で、それよりも高い。東京の高級パティスリーやフルーツパーラーだと、ケーキ1ピースで500円や600円のものがそれなりにあるが、いかに“ゴディバコラボ”と言えど、コンビニスイーツがそういうところと勝負できるだろうか? そんな価格設定である。

 ビニール袋のパッケージングが疑念に拍車をかける。少し凝っているとはいえ、雰囲気はUchi Cafeシリーズの延長線上にある感じで、ゴディバの特別感は薄い。袋の中身も普通のUchi Cafeシリーズと変わらない、プラとフィルムだ。そんな一抹の不安を抱えながら、ペリッと袋を開けてみた。

“濃厚”ショコラケーキならば、もう少し奥深さにこだわってほしい

 まずは濃厚ショコラケーキから。円形ケーキのサイズは“スプーンで食べるロールケーキ”のクリーム部くらい、と言えば伝わるだろうか。表面にココアパウダーをあしらってあり、真ん中にはゴディバシリーズに共通する金文字入りのビターチョコプレート。見た目は少し凝っている。

 食感はムースよりも固く、ガトーショコラをもっとしっとりとさせたようなもの。この優しさは丁寧に作ってある感じがして好印象だ。加えて甘さは控えめで、安っぽいチョコレートのようにベタッと口の中にまとわりつくような感じがしない。名前にも入っているラズベリーガナッシュは中心70%くらいのエリアにあり、酸味は強くはなく、マスカルポーネチーズのような柔らかさを感じる。そのフレッシュな刺激が華を添える、これはなかなかおもしろい。見た目以上にボリュームもあるので、空腹でなければひとつで割と満足できる。

「さすがにゴディバのバッジを付けるだけあって、なかなか凝っているじゃないか」と感心したいところだが、残念ながら僕はこのケーキをあまり手放しでは褒められない。何と言ってもカカオの香りが希薄で、世界のチョコレートブランドを名乗りながら、肝心のチョコレートにコクと奥深さが足りない。これはちょっと痛すぎる。

 特に中央のプレートは、ビターなカカオのコクがまるで活かしきれていない。生地に練り込まれたミルクはまろやかさを与え、チョコレートの嫌な刺激をうまく丸めている。でもそれは濃厚と言えるレベルではない。本当においしいお菓子で感じるミルク感は、このショコラケーキからは感じなかった。

 チョコとミルクはチョコレート菓子の土台であり、それがイマイチなのは致命的だ。僕にとってのお菓子の命は「口当たり」「香り」「味」の3点。これらがどれだけ複雑で豊かなのかが重要で、各要素が別の要素に作用して相乗効果を生んだりすると、ハイレベルなお菓子となる。そんな味覚世界を表現するには土台がしっかりしていることが絶対条件だが、カカオのコクやミルクの濃厚さがもうひとつなこのショコラケーキは土台がグラグラなので、装飾に当たるラズベリーの酸味といった要素がまとまらない。

 評価としては「無難にまとめた感じ」だ。雰囲気は“高級っぽい”、少なくとも安っぽさは無い。が、決して“高級”ではない。「何でこうもカカオが香らないかな?」と首をかしげる、魂が抜け落ちたような感じだ。複雑さや突き抜ける香りの高さなどといった光るものも足りず、“ゴディバらしい高級な落ち着き”は、少なくとも味と香りからは感じられない。

 ゴディバ度30%、これではちょっと厳しいか。同じ値段を出すならば、ゴディバのショップでボンボン・ショコラを一粒買った方が満足度は高い。少なくとも僕は。

食べにくさが玉に瑕だが、ショコラクッキーサンドはオレンジピールが華やぐ

 ショコラクッキーサンドはどうだろうか。こちらは表面に細かい金箔があしらわれ、ゴディバのコーポレートカラーと相まって雰囲気はショコラケーキよりも出ている。サイズはだいたい手のひらに収まるくらいで、アスキー的な表現をすると「長さiPhone SEの画面くらい、厚さOAタップくらい」といったところか。この大きさは良し悪しで、ボリュームはあるが、半分食べた辺りからかじると中のクリームが横に飛び出してくる。食べやすさを考えると、おそらく一口サイズで3つ入りとかの方がいいと思う。

 味に関して、一口食べてまず感じるのは、口の中に広がる上品なオレンジピールの香りだ。この余韻は結構長く響いて、風味を良い印象が支配する。今回一緒に頂いたお茶はウェッジウッドの「イングリッシュブレックファスト」だったが、このオレンジ感にはダージリンなどの華やかな紅茶と相性が良さそうだ。あるいは香りの高いコーヒーとのマリアージュもおもしろいだろう。

 一方、コクと香りといったチョコレートっぽさはちょっと薄く、チョコ好きの僕としてはカカオ感が物足りなく感じる。クッキーはサクサクの食感がショコラクリームと良いマッチング具合だが、もっとバターやクリームの風味があれば、味の世界はより豊かになるだろう。正直なところ、クッキーとショコラにはもう少し頑張ってもらいたい。もし本家ゴディバが同じモノを作ったとしたなら、オレンジピールに対してカカオ/バター/クリームがもっと複雑な香りのハーモニーを奏でるはずだと感じる。

 だが、オレンジピールを香りの主役に据えた点は大いに評価したい。何よりもオレンジのアロマが落ち着いている点が良く、安くはないがコレならまあ悪くもないなと感じる。ゴディバ度60%、ギリギリ合格だ。

良いところもあるが、ゴディバらしさはもっと追求できるはず

 食べ終えて感じたことは「ゴディバブランドと言えど、やっぱりローソンのUchi Cafe。プロパーのゴディバの感動が得られるとは限らないな」ということだ。普通のコンビニスイーツよりハイレベルなのは間違いないが、コンビニスイーツの枠を超えられていたかと言うと、必ずしもそうとは言い難い。

 それでもコンビニスイーツだからと斜に構えていると、ショコラクッキーサンドのように思わぬ香りのワンダーに出会うことだってある。ゴディバを盲信すべきではないし、コンビニをあまり卑下するのも違う。要は自分の舌を信じるべきだということである。

 ただし、ローソンにはやはり一言物申す必要がある。「ゴディバ」の看板を掲げる以上、チョコレートのコクと香りにはもっとこだわってもらいたい。全国で24時間営業をしているコンビニのスイーツに、クオリティーで勝負をしようとしたこと自体は賞賛に値するが、それならばどこまでも本物のゴディバを目指すべきだ。

 ブリュッセルで感じた丁寧なチョコレート、その本質を追求することこそ、ゴディバブランドを掲げる意味だと僕は思う。そうであれば、あのパッケージも、あのチョコの香りも、根底から変わってくるはずだ。

ローソンの“コンビニゴディバ”がどれだけ「ゴディバ」か超気になる


(出典 news.nicovideo.jp)