日頃から健康に気をつけて、「体にいい」とされる生活習慣や食事に気をつけている人が多いのではないだろうか。

 だが、医学や健康の常識は、どんどん変わっている。昨日まで正しいと思われていたことが、いつの間にか誤りとなっていることも少なくない。古い知識のままで、間違った習慣を続けていると、かえって健康を損なわないとも限らない。

 そこで、最新の研究成果や知見に基づき、医学と健康の新常識を全98項目集めてみた。1回目は「食の新常識」。「目から鱗」の話が多いはずなので、ぜひ健康づくりに役立てていただきたい。

 肥満や生活習慣病の大敵と思われているのが「脂肪」だ。肉や揚げ物を意識して控えている人が多いのではないだろうか。だが、脂肪を目の敵にする考え方は時代遅れになりつつある。群星沖縄臨床研修センター長の徳田安春医師は、「脂肪よりも糖分(炭水化物)の多い食事を控えるべき」と話す。

「近年、脂肪よりも糖分の摂り過ぎが肥満や糖尿病のリスクを上げることを示す研究が次々報告されています。1グラムあたりのエネルギー量で見ると、炭水化物(4キロカロリー)より脂肪(9キロカロリー)のほうが高いのは確かです。しかし、米国では総カロリーを減らそうと低脂肪食を推奨してきた結果、炭水化物の摂取割合が増えて、かえって肥満や糖尿病が爆発的に増加してしまいました。脂肪摂取の割合と体の脂肪のつき具合も関係ないことがわかってきています」(徳田医師のブログ「総合診療医の健康アドバイス」

 脂肪も摂り過ぎるとよくないが、世界最高の健康食と言われる地中海食は、魚介類や野菜にオリーブオイルをたっぷりと使う高脂肪食で、心筋梗塞など心血管病が少ないことが知られている。サフラワー油、ひまわり油などに含まれる「リノール酸」や、マーガリン、ショートニングなどに含まれる「トランス脂肪酸」のように、摂り過ぎると体に悪いとされる種類の油脂もあるが、脂肪のすべてが悪いわけではないのだ。

おもちは糖分の爆弾、お代わりに要注意

 では、特に気を付けたほうがいいのは、どんな食材だろう。管理栄養士の安中千絵氏も一番に注意すべきと言うのが、「糖分」を多く含む食材だ。たとえば、つい暴飲暴食をしてしまうお正月料理では、「おもち」に注意してほしいという。

「おもちは糖分の爆弾です。見た目は小さいですが、2つで男茶碗にしっかり1杯程度の糖質が含まれています。お雑煮をお代わりしたら、おもちを3つ4つと食べることになりますが、それだけでどんぶり飯を食べたのと同じになるのです」

 お雑煮には糖分の多い海老芋やくわいを縁起物として入れる地域もある。なので、お雑煮のお代わりや、一緒にごはんを食べるのはやめたほうがいい。それに、おせち料理にも、味付けに大量の砂糖が使われているものが多い。きんとん、伊達巻、田作り(ごまめ)、黒豆などだ。お正月によく食べる煮しめにも、糖分の多い里芋がよく入っている。

 それよりも、おせち料理なら、えび、かまぼこ、焼き豚、ローストビーフ、なますなど、煮しめでは鶏肉、こんにゃくなどを中心に食べたほうがいいと安中氏はアドバイスする。とくにお酒を飲む人は、肉類や魚介類など、良質のたんぱく質を摂ってほしいと言う。

「アルコールを分解するのに大量のビタミン、ミネラル類を必要とするので、お酒を飲む人は栄養が不足しがちです。こうした栄養素は肉類や魚介類に多く含まれています。日頃から意識して栄養価の高い食材を摂ってください」(安中氏)

コレステロールを避けるのはもう古い

 ただし、高脂肪・高たんぱくの食材には、鶏卵、魚卵、レバー類、豚肉、牛肉などコレステロールが豊富に含まれているものが多い。動脈硬化を促進するとされているので、マヨネーズや食用油なども、できるだけコレステロールの少ないものを選ぶ人が多いだろう。

 しかし、コレステロールはできるだけ避けるべきという考え方はもう古い。『座りっぱなしでも病気にならない1日3分の習慣』などの著書がある池谷医院院長の池谷敏郎医師が解説する。

「食事でコレステロールの摂取量を減らしても血中のコレステロール値が下がる証拠はないことがわかり、米国のガイドラインではコレステロールの摂取制限が撤廃されました。これを受けて日本でも日本動脈硬化学会が2015年に、健常者については摂取制限を設けないことに賛同する声明を出しています」

 高齢者ではコレステロールを気にするあまり、かえって脂肪やたんぱく質不足になり、過度にやせて筋肉量が落ちる人がいる。しかし、それではかえって健康を害するので、卵や肉類はしっかり摂ったほうがいい。

 ただし、どんな場合でも、卵をいくつでも食べていいということにはならないと池谷医師は釘を刺す。

「多くの人のコレステロール値は食事では上がりませんが、3割ぐらいの人は卵などを食べるとコレステロールが上がります。血液検査で脂質異常症と指摘された人や、血中コレステロール値が食べ物の影響を受けやすいことがわかった人は、やはりコレステロールの多い食材は控えるべきです」

 また、動物性脂肪やたんぱく質ばかりを摂ると、野菜が不足して栄養が偏ることになり、それも動脈硬化や高血圧、糖尿病などを促進する一因になりうる。糖分は控えめにしつつ、脂肪、たんぱく質、野菜をバランスよく食べることが大切だと池谷医師は言う。

 とはいえ、野菜を大量に摂る必要はない。ビタミンや食物繊維が豊富な野菜や果物はがん予防になると考えられてきたが、大量に摂るほど予防効果が上がるわけではないことも分かってきたからだ。ビタミンやミネラルが足りないとがん以外の病気にもなりやすいので野菜や果物を食べることは大切だが、不足しない程度に食べていれば、がん予防には十分だ。

コーヒーを飲むのに一番いい時間は……?

 こうした食べ物以外に、より健康に気を使いたい人には、コーヒーがおすすめだ。日本の大規模な住民研究(多目的コホート研究)で、コーヒーをよく飲む人ほど、糖尿病の発症率が低いという結果が出ている。さらに、肝がんや子宮体がんなども予防できる可能性があることが示されている。コーヒーが苦手な人は無理に飲む必要はないが、好きな人は病気予防も意識して飲むといいだろう。

 ただし、この研究によると、1日3〜4杯の人がもっとも死亡リスクが低いという結果だった。また、朝一番に目覚めのコーヒーを飲む人が多いが、前出の安中氏によると、コーヒーを飲む時間も意識したほうがいいという。

「朝になると目を覚ますためにコルチゾールというホルモンが放出されるのですが、その量は朝の8時から9時ごろにピークになります。そのときにカフェインを摂取すると、実はコルチゾールの分泌が阻害されてしまい、カフェインが効きにくくなるのではないかと考えられています。なので、コーヒーを飲むなら、コルチゾールの分泌が落ちるお昼前をおすすめします」

 朝、一仕事片付けてから、優雅にコーヒーを飲むのがベストかもしれない。

(初出『週刊文春』2017年1月5・12日号)

(鳥集 徹)

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