連載「働く人の食事術」―日本でも話題になった食事療法を解説

 忙しく働く大人世代が日常のパフォーマンスを上げる方法を“食”から考える「THE ANSWER」の連載「働く人の食事術」。Jリーグラグビートップリーグをみてきた公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏が日々のパフォーマンスを上げる食事術を指南する。

 最近、スポーツ界を発信源として話題の「グルテンフリー食」。健康情報に敏感なビジネスマンも気になるところ。では「グルテンフリー食」とはいったい何なのか。スポーツの第一線にいる橋本氏ならではの情報、視点を交え、優しく解説してくれた。

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 プロテニス選手のノバク・ジョコビッチ氏が実践した食事療法として、日本でも非常に話題になった「グルテンフリー食」。超一流のアスリートが実践しているとあって、実践するまでいかなくても、効果が気になるビジネスパーソンは多いでしょう。

 グルテンフリー食とは、食品に含まれるタンパク質の一種、グルテンを除去した食事療法。元来はセリアック病の患者さん向けの食事ですが、健康に良いこと、体重や体脂肪が減ることを期待し、今ではセリアック病ではないアスリートたちも実践。世界的な食のトレンドの一つとなっています。

 セリアック病とは、小麦や大麦、ライ麦などに含まれるグルテンに反応して起こる、自己免疫疾患。一般的にはグルテンを摂取することで、下痢や便秘、腹部の不快感、気分の不調(不安やいらだち)といった症状が現れます。

 欧米のアスリートを対象に行われたある研究によると、アスリート910人中、非セリアック病のアスリートの41%がグルテンフリー食を実施。しかも、大多数の選手(81%)が、腹部膨満、下痢、 疲労といった、症状が改善したと回答しています。また、世界のトップアスリートたちが集結するオリンピックの選手村食堂でも、選手や栄養士からのリクエストが多く、必ずグルテンフリー食が用意されています。

 一方、グルテンフリー食とパフォーマンスの関連についての研究は、現時点では少なく、グルテンフリー食がパフォーマンスに有利に働くとは言い切れません。しかし同時に、全く効果がないと言えるほどの研究も行われていないのが現状です。私もアスリートやコーチたちに「グルテンフリーは体にいいの?」「効果はあるの?」と時々、聞かれますが、アスリートにとって良い悪いと言うには時期尚早だと伝えています。

 それでも、グルテンフリー食を始めたことで、体調が良くなったと実感する選手もいますので、パンやパスタなどグルテンを含む食品を制限することで、他の栄養素が不足しないよう、栄養アドバイスをしています。

ビジネスパーソンが実践する場合は「栄養の偏り」に注意

 さて、とあるプレス勉強会で、世界のアスリート食について講演をした時のことです。「グルテンフリー食は世界中のアスリートから求められている食事の一つ。2020年東京オリンピック選手村でも、グルテンフリー食は必須」と話したところ、「日本は米食の国。効果があるかないかわらかない食事を摂り入れる必要はない。外国の食文化に影響されすぎではないか?」という質問を新聞記者から受けました。

 国を代表する選手たちが集まるオリンピックの選手村の食堂では、選手のニーズに応えることがとても大事です。効果があるなしではなく、今やグルテンフリー食はベジタリアンなどと同様、選手の食の嗜好の一つ。少なくないニーズがあるならば、選択肢の一つとして準備するのは当然のことです。

 また、「これを食べると調子がいい」という食事は、選手たちにとってコンディションを整えるために必要なルーティンの一つです。日々、アスリートと接していて感じるのは、「効くか効かないかわからない」食事でも、選手が求めているのであれば準備するのがとても大事だということです。

 これまでの研究では、グルテンフリー食は特定の食品の摂取を制限するため、食物繊維ビタミンミネラルが不足しやすいという結果が出ています。ビジネスパーソンも、実践するなら肉や魚、野菜、果物といった体に必要な食品をバランス良く取り、栄養が偏らないように注意してくださいね

小麦粉を使った食品や炭水化物を減らす「グルテンフリー食」の気になる効果と現状は?


(出典 news.nicovideo.jp)