厳しい暑さの日が増えてきました。夏になると、冷たい物を食べる機会や食欲不振に悩まされる機会が増え、食生活が乱れがちとなります。きちんとした食事を取らないことで体調不良となり、日々の生活に支障が出る可能性もありますが、とはいえ、食欲が出ないと食べる気にはなれません。食欲が出ないときは無理に食べない方がいいのでしょうか。また、夏はどのような食べ物を取ると効果的なのでしょうか。

 夏の食生活の注意点について、医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。

梅干しショウガで食欲増進を

Q.そもそも、夏に体調不良となる原因は。

森さん「食生活は体調によって左右されますが、夏は体調を崩す要因がいくつかあります。暑さや湿度の高さによる疲労、汗を大量にかくことによる脱水、クーラーで冷えた屋内と屋外の気温差による自律神経の乱れなどです。こうした夏の不調の多くは消化器の働きを低下させ、食欲不振や偏った食生活になりがちです。

食生活の乱れによって、食事の量だけでなく、ビタミンミネラルタンパク質など必要な栄養素が十分に取れていない状態となり、体力を消耗させ、さらなる疲労感やだるさにつながります。また、便秘や下痢、貧血、立ちくらみなどの原因となることもあるので、食欲不振が長引く場合は注意が必要です」

Q,暑い日が続くと、冷たい食べ物ばかりを食べてしまいがちです。冷たい食べ物を食べ続けると、健康上どのような影響があるのでしょうか。

森さん「暑いときほど、冷たい食べ物や飲み物で『体の熱を冷ましたい』と感じますが、冷たい物を取りすぎると胃の温度が下がって消化吸収機能が低下し、ますます食欲不振につながる可能性があります。また、冷たい飲み物を一気に多く取ると水分の過剰摂取で胃液が薄まり、消化しにくくなるともいわれています。

このほか、口当たりや喉越しの良さを求めて、アイスクリームや炭酸の入ったジュースなどを頻繁に取ることも、糖分過多により血糖値の異常やさまざまな病気を引き起こすリスクを高めます」

Q.夏バテになると食欲がなくなることもあります。食欲がない場合、無理に食べ物を食べない方がいいのでしょうか。それとも、何かしら食べた方がいいのでしょうか。

森さん「食欲が出る工夫をしながら、朝昼晩の3食を欠かさないことが大切です。食事で補われている塩分や水分が取れなくなることは脱水症状にもつながりますし、必要な栄養素が不足することで、夏バテによる疲労感やだるさの回復にも時間がかかります。

いつもより少ない量であっても、ビタミンミネラルタンパク質を含む食材を中心にバランスよく取ることを心掛けましょう。例えば、レモン梅干しの酸味、ショウガやミョウガなどの香りは食欲増進の効果があるといわれていますし、リゾットややわらかく煮込んだスープなどは胃に負担をかけずに消化できます」

Q.それでは、食欲不振の際に食べた方がよい物、食べない方がよい物はありますか。

森さん「疲労回復の働きがあることで知られている『ビタミンB1』は豚肉、レバー、大豆などに多く含まれています。香りの成分である『アリシン』を含むニンニクやネギ、ニラなどと一緒に調理することで、ビタミンB1を吸収する効果が高くなるのでおすすめです。ビタミンB1を多く含むウナギ夏バテ防止で有名ですが、脂質も多いので、消化する際に胃に負担がかかるという一面があります。

おいしく、健康に食べるには、体調と相談することも必要です。ナス、キュウリトマトカボチャなど夏が旬の野菜はビタミンミネラルカリウムなどが豊富に含まれている上に、汗で失われた水分も補ってくれます。

なお、『冷たいビール揚げ物で元気を出すぞ!』と思う人もいるかと思いますが、飲酒は脱水症状につながりやすく、また先述の通り、脂質の多い食べ物は消化に時間がかかるので、夏バテの際は気を付けてください」

塩分は多めに摂取してもよい?

Q.「夏は汗をかくから、塩分を多めに取った方がよい」「多少、塩分過多になっても大丈夫」と考える人もいるようです。食事の際に、他の季節よりも塩分を多く摂取してもいいのでしょうか。逆に、夏に塩分をあまり摂取しないとどうなるのでしょうか。

森さん「汗をかくことにより、水分とともに塩分が失われますが、食生活がいつも通りであれば、食塩を多めに取る必要はありません。

日本人の食塩摂取量は必要量より多く、厚生労働省2017年『国民健康・栄養調査』によれば、成人男性は平均で1日10.8グラム、女性は9.1グラム摂取しています。厚労省が推奨する1日あたりの目標値は、男性が8.0グラム未満、女性が7.0グラム未満なので、発汗によって多少失ったとしても不足するほどではないのです。特に、高血圧の人は夏であっても1日6グラム未満に控える“減塩”が大切と、特定非営利活動法人日本高血圧学会は注意を呼び掛けています。

ただし、気温が高い屋外での作業やスポーツで大量に汗をかいたときは、スポーツドリンクなどで水分とともに少量の食塩を含むミネラルを補給することが必要です。また、夏場の食欲不振から食事を抜いたり、食事量が著しく減ったりしていると、食塩の量が不足する場合があります。水分と塩分の両方が不足することにより、頭痛や嘔吐(おうと)、けいれんなどを起こすこともありますので注意が必要です」

Q.夏にコーヒーや紅茶を飲むと、熱中症になる可能性は高まるのでしょうか。

森さん「極端に多く飲み過ぎると、コーヒーや紅茶に含まれるカフェインの利尿作用によって、摂取した水分以上の尿が出て脱水につながり、熱中症の原因になる可能性はあります。しかし、一般的に『喉が渇いた』と感じて飲む程度の量であれば、そこまでの影響はないと考えられています。むしろ、コーヒーや紅茶を飲む習慣のある人が利尿作用を気にして飲まなくなり、水分摂取の機会そのものが減ることで熱中症の危険が高まるという指摘もあります。

カフェインの摂取については、欧州食品安全機関、米国保健福祉省などは『健康な成人は1日最大400ミリグラムまでのカフェイン摂取は問題ない』と見解を示しており、コーヒーカップで3~5杯程度が目安と考えられます」



(出典 news.nicovideo.jp)