ニンジンは皮をむいてから、料理に使うのが一般的ですが、ネット上では「皮をむかなくても、おいしく食べられる」「栄養的には皮付きの方がいい」といった情報もあります。ニンジンを含め、野菜や果物は皮をむかずに食べても問題ないのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

ジャガイモリンゴも皮に栄養

Q.ニンジンの皮をむかずに食べても問題ないのでしょうか。問題ない場合、栄養価の面で、皮付きと皮をむいた状態ではどちらがよいのですか。

岸さん「ニンジンの皮は食べても問題ありません。むしろ、皮に栄養素が多く含まれており、ベータカロテンは実の部分の2.5倍も含まれています。泥や汚れはきれいに洗い流した上で、むかずに食べた方がよいです。時間がたつと皮が黒ずむことがありますので、サラダなどで色が気になる場合は薄く、皮をむくとよいでしょう」

Q.ジャガイモフライドポテトなどで、皮付きで提供されることもあります。皮付きと皮をむいた状態では、どちらの方が好ましいでしょうか。

岸さん「ジャガイモニンジン同様、皮ごと食べた方が栄養的には好ましいです。皮にカルシウムや鉄分が含まれているためです。マッシュポテトコロッケサラダのように皮が邪魔をする料理の場合は、ゆでる際に皮ごと調理することで栄養の損失が少なくなります」

Q.リンゴをそのまま、かじって食べる人もいますが、やはり、皮付きで食べた方がいいのでしょうか。

岸さん「リンゴも皮にポリフェノールや食物繊維が多く含まれるため、皮付きの方が栄養的には優れています。全ての野菜や果物にいえることですが、皮の部分は紫外線やバクテリアから身を守るため、抗酸化作用や抗菌作用のある『フィトケミカル』という機能性物質を多く含んでいます。ポリフェノールもフィトケミカルの一種です。また、ペクチンなどの食物繊維も皮に多く含まれています。

皮をむいて食べるのはむしろ、栄養素を捨てることになりますので、食べられる皮は食べた方がよいでしょう。ダイコンは皮にビタミンCが多く、ゴボウショウガは皮に香り成分が多いといわれます。ブドウも皮にポリフェノールが多く含まれ、皮をそのまま使う赤ワインにはポリフェノールが多く含まれます。皮をむいて食べるのは個人的な嗜好(しこう)ですが、皮には多くの機能性物質が含まれています。

そもそも、ニンジンジャガイモリンゴといった農作物は農協などが体に害がないことを厳しく調べてから流通させており、基本的には皮を含めて安全性が担保されています。たとえ、野菜や果物に農薬が残っていても、もともと、健康に影響を及ぼすような量ではないので、そのまま食べても問題はありませんし、普通は水で汚れを落としたり、熱を加えて調理をしたりするので、農薬の量はさらに減少します。神経質にならず、普段通り、洗って料理すれば、健康を害することはありません」

Q.それでは、皮は食べられるものの、極力むいてから食べた方がよい野菜や果物はあるのでしょうか。

岸さん「ミカンなどのかんきつ類や、毛の生えたキウイアボカドのような硬い皮、玉ねぎの茶色い皮は食感などの面から、むいた方がよいと思います」

Q.野菜や果物を皮付きで食べるときの注意点はありますか。

岸さん「汚れや泥がついている場合は、野菜専用のタワシできれいに水洗いしましょう。ジャガイモの場合は芽に『ソラニン』という毒素があるので、芽をしっかり取ってから使いましょう。カボチャの皮にはゴツゴツとした硬いいぼが付いている場合がありますが、食感を損ない、味的にもよくないため、いぼをそいでから使うのがよいでしょう。そのほか、洗っても落ちにくい泥や、くぼみの汚れなどは包丁で取り除いて使います」

Q.皮付きで食べても問題ない野菜や果物について、「皮をむくもの」という認識が広がっているのはなぜでしょうか。

岸さん「調理学の教科書は丁寧に皮をむき、水にさらして、白く仕上げたり、パリッとさせたりするなど見栄えよく調理するという観点で書かれています。その伝統的な考え方から、『皮をむくもの』という認識が広がっているのでしょう。しかし、最近は栄養的な観点から、調理法も変化しています。

できるだけ、丸ごと食べるという『ホールフーズ』の考え方、栄養的な損失を極力減らす調理法など、現代人が摂取しにくくなった栄養素を少しでも取れるようにという意味合いもあるでしょう。『ベジブロス』といい、食べるには適さない部分をだしに使って、栄養素を抽出したスープも注目されています。近年、社会問題化している『食品ロス』対策としても、皮付きで食べることは有効です」

ニンジンは皮付きでもおいしい?


(出典 news.nicovideo.jp)